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個人の自己破産・借金整理

自己破産をしても年金はもらえますか。

 自己破産しても年金はもらえますか。

 破産手続きにおいて破産者は、破産時点の債務について、破産時点で持っている財産で弁済することになります。つまり、破産の手続きに関係するのはあくまで破産時点での債権債務だけなのです。従って、破産手続き開始後に新たに破産者が債務を負った場合には、その債務の弁済に付いては破産手続きとは無関係に全額弁済する必要が生じますし、逆に、破産手続き以後に取得した金銭、例えば賃金などは、全額破産者のものとして使用することができます。ただ、破産時点では債権として現実化していないものであっても、例えば退職金のように、退職金債権の発生の原因となる労働を行っているのですから、破産手続きのなかで処理される債権となる場合もあります。では、年金はどうでしょう。一見、退職金のように、破産手続き前に納付した年金保険料に基づいて支払われるものだから破産手続きの上で処理されてしまうようにも思われるかも知れません。しかし、年金は、支払った保険料に紐付いて給付されるものではありません。労働の対価の後払いの性格を持つ退職金とは違います。それが証拠に、保険料をいくら支払ったとしても、将来受け取るべき年金額は、その時の財政状況などによって変動します。これは保険料に対する給付ではなく、保険料の納付期間を一つの条件とした上で、政策的に国から支給される金銭に過ぎないことを表しています。従って、破産したとしても、保険料を納付している限り(あるいは免除の手続きをきちんとしている限り)年金はもらえるということになります。なお、現在年金を受領している人が破産したらどうなるか、については、年金は差押禁止債権とされていますので、そもそも破産手続き上の財団に属する債権ではないとされています。従って現在受給している方が破産しても年金の受給権は失わないことになります。, 執筆日20050629 個人の自己破産手続はどう変わったのか。, 現行の破産法は、個人の自己破産手続について、どのような改正が行われたのか。"

 新しい破産法は、平成16年に成立し翌年1月に施行されました。新法における個人破産(自己破産)についての改正は、個人破産者について経済生活の再生の機会の確保を図る、という大きな目的に向け、破産者の自由になる財産の範囲の拡張、および破産者の再生・免責のための手続きの整備が行われたと言えます。具体的には、まず、1)破産者が自由になる金銭が、従来21万円だったところ、99万円となりました。民事執行手続き(強制執行手続き)では2ヶ月分(=66万円)分の差押が禁止されていますが、現行破産法はこれよりも1ヶ月分多い額が、自由になるとされています。2)また、従来は農業漁業者が破産した場合事業に使っていた財産は取り上げられていたのですが、新法ではそれらの者の事業に欠くことが出来ない器具に該当するとされましたので、取り上げられることはありません。3)さらに、裁判所の裁量で自由になる財産の拡張が認められることになりました。これは裁判所が個人の再生に対して、もっと後見的な立場から支援していこうとする現われです。次に免責の手続きについてですが、1)まず従来破産申立てと免責の申立てとは別のものであり、免責の申立ては破産決定がなされてから1ヶ月の間にしか認められていませんでした。しかし新法では特に異議がなければ、破産申立てがあったときに自動的に免責の申立てもなされたものとみなされることになり、免責申立てをしなかった破産者を救済するとともに合理化を図っています。2)また、破産者の再生機会の確保の趣旨から、免責の許可の決定がされるまでは、債権者などによる個別財産に対する強制執行が禁止されました。さらに3)旧法ではなかった裁判所による裁量免責の制度が制定されました。通常免責の決定は不許可事由がないことが条件となり、旧法では不許可事由がたとえ軽微なものであっても、免責は(条文上は)認められませんでした。新法では破産者の再生の観点から、免責不許可事由がある場合であってもそれまでの経緯その他一切の事情を考慮して、免責の許可決定を出すことが裁判所に認められました。さらに、4)旧法で前回の免責から10年以上経過していないと再度の免責は受けられないとされていましたが、新法では7年に短縮されました。ただ、5)破産者が故意または重大な過失で加えた不法行為による損害賠償の債務と配偶者や子供への扶養扶助養育に関する義務は、免責対象から除外されています。これは、旧法に比べて破産者に厳しくなっています。