法律Q&A
(C)Powered by LON

ホーム > 法律相談Q&A > 夫婦生活・離婚・養育費

夫婦生活・離婚・養育費

養育費を請求しない旨の約束の効力

 離婚に際して、母である私が子供の親権をとる代わりに、父である相手方に養育費を一切請求しないことになり、相手方にその旨の念書を差し入れてしまいました。その後、私の生活が苦しくなったため、相手方に養育費を請求したいのですが、可能でしょうか。

 養育費は未成熟子の生活費であり、それは親の子に対する生活保持義務(親と同程度の生活を確保する義務)の問題として捉えられています。親が未成熟子に対して生活保持すべき義務があるのは、ただ親子関係があることそのものから生じるものですから、離婚後においても両親は親権の有無に関わらずそれぞれの収入などに応じて、未成熟の子の養育費を負担すべき義務があるのです。ここで、養育費は子供の生活の問題ですから、そもそも養育費支払いを親権者でない他方の親に請求できるのは子供自身であるということになります。では、あなたが差し入れた念書はどのような意味を持つのでしょうか。これについて判例では、親権者である母が、子供の法定代理人として、子の父に対する扶養請求権を放棄しても無効であるとし、また母が負担する養育費を父に求償(父の代わりに負担した分の返還を求めること)しないことを定めたにすぎないのであれば、父と母との間ではその効力があるが、そのことは子の父に対する養育費請求を妨げるものではない、旨の判断がなされているものがあります(札幌高裁決定昭和43年12月19日)。ですから、原則として、このような合意があっても子供から相手方である父に対する養育費の請求自体は妨げられないことになります(その場合あなたが子供を代理して相手方に請求することになります)。ただ、そのような念書があることが養育費の額の算定に当たって考慮される余地があります。話し合いがつかない場合は家庭裁判所に調停を申し立てるとよいでしょう。

執筆日20000830