- 長期間夜の営みを拒否されています。離婚原因になりますか?
妻も私も健康で、医学的(肉体的にも、精神的にも)にセックスを拒否する理由はありませんが、私が望んでも妻は拒否します。数ヶ月に一度、彼女の方に子供を作りたいという気が起きることがあり、そのときだけ服を着たままで交わることを許されるが、早く終われと言われ、キスもさせてもらえずに終わります。とても夫婦間のスキンシップになっていません。夫として婚姻関係の維持が苦痛です。離婚できないでしょうか?私は35歳、妻は33歳です。子供はいません。 長期間にわたる性生活の欠如が、「婚姻を継続し難い重大な事由」にあたるとして離婚を認めた判決があります(京都地裁昭和62・5・12判決)。性生活の欠如や性生活上の嗜好の不一致を離婚原因を肯定する要因とした判決は他にもみられます。多くの事例では、単に性生活がないというだけでなく、お互いの感情のすれ違い、性格上の不一致、相互の理解や思いやりの欠如、一方の暴力等様々な要因とあいまって、現実に夫婦生活の継続が困難であると判断されている場合が多いのですが、先の京都地裁の判決は端的に夫の性的不能による長期間の性生活の欠如をもって離婚を認めた点で注目に値します。貴方の場合、年齢的にも、双方に肉体的・精神的障害がないことからも奥さんの態度は尋常ではないと思えます。そのような態度からすると、単に性生活の問題だけでなく日常生活においても性格や嗜好の不一致や感情のすれ違い、あるいは、奥さんに貴方に対する愛情の欠如を感じさせるような言動などがあるのではないでしょうか。そのような事由を枚挙し、これらを総合して夫婦生活が破綻しているとの主張は可能であり、ご質問のような性生活上の問題をその一つとして、離婚原因を構成することで離婚請求が認められる可能性はあると思います。また、京都地裁の判決から推し量れば、性生活の全くない状態が3年とかの長期にわたれば、それだけで、離婚原因になる可能性もあります。最後に、先の京都地裁の判決の他、婚姻生活における夫婦のあり方について一般論を述べた東京高裁の判決を引用しておきます。ご参考下さい。「婚姻を継続し難い重大な事由とは、婚姻中における両当事者の行為や態度、婚姻継続の意思の有無など、当該の婚姻関係にあらわれた一切の事情からみて、婚姻関係が深刻に破綻し、婚姻の本質に応じた共同生活の回復の見込がない場合をいい、婚姻が男女の精神的・肉体的結合であり、そこにおける性関係の重要性に鑑みれば、病気や老齢などの理由から性関係を重視しない当事者間の合意があるような特段の事情のない限り、婚姻後長年にわたり性交渉のないことは、原則として、婚姻を継続し難い重大な事由に該るというべきである。」(京都地裁判決抜粋)「婚姻は、その性格、ものの考え方・感じ方、それまでの生活歴等を異にする一組の男女が結合して共同生活を営んでいくものであるから、互いに相手方を十分に理解し、精神的、物質的、肉体的のあらゆる部面にわたって相互に協力し、扶助するのでなければ、とうていその目的を全うすることは不可能である。前認定の事実によれば、本件においては、控訴人、被控訴人の双方ともに婚姻生活というものが右のようなものであることについての深い理解を欠き、相手方を思い遣る心の広さを持ち得ないで、それぞれが身勝手な態度・行動に終始して衝突を繰り返し、相互に相手方に対する愛情や信頼を失っていったものであり、控訴人と被控訴人間の婚姻関係が破綻を来たしたのはここにその原因があるということができる。」(東京高裁判決抜粋),
執筆日20010706