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夫婦生活・離婚・養育費

離婚の慰謝料や子供の養育費などは、民事再生手続ではどのように取り扱われるか。

 夫と離婚しようと思います。夫には愛人がいて慰謝料が請求できると思うのですが、夫は借金があり民事再生手続をするということです。私の慰謝料請求権や子供の養育費請求権などは、民事再生手続ではどのように取り扱われるのでしょうか。

 民事再生手続きのうち個人債務者に関するものは、いわゆる再建型の倒産手続きの一つとして位置づけられ、破産に至らずに経済的再生を果たせるようにするとともに、債権者にとっても債務者が破産した場合よりも多くの金額を回収できるように定められたものです。民事再生手続きでは、債務者は再生手続き開始決定があっても現在の財産を保持することができ(破産法の場合は全財産を処分する必要がある)、その代わり裁判所の認可を受けた再生計画に基づき将来の収入の一定部分を債権者に対する弁済に充てることになりますし、再生計画に入れられなかった範囲の債権額については免責されるということになります。しかし、この手続きにおいては、破産法と同様に非免責債権というものが定められています(民事再生法229条3項)。この中には、1)再生債務者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権、2)再生債務者が故意または重大な過失により加えた人の生命・身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権、3)夫婦間の協力扶助義務・婚姻費用の分担義務、子の監護に関する親の義務、親族間の扶養義務、などが定められています。従って、まず、子の養育費については、明らかにこの非免責債権になりますので、民事再生による再生計画が定められた後であっても、債権者であるあなたが免除しない限り、債務者は全額を支払う必要があります。次に慰藉料についてです。離婚における慰藉料については不法行為による損害賠償という性質と財産分与という性質、離婚後の生活扶助という性質などが並存しているものと考えられます。従って、財産分与や離婚後の生活扶助の部分と考えられるものは上記の非免責債権となります。問題は不法行為に基づく損害賠償債権である純然たる慰藉料の部分です。上記の法律の1)に基づく損害賠償請求権は、「悪意で加えた」不法行為によるものとされています。また2)は悪意は要求されていませんが「生命身体」に対する損害に限定されています。従って1)の悪意による不法行為の意味が問題となります。ここでは単に故意によるものだ、という学説もありますが、裁判所では「他人を害する積極的な害意」が必要であるとしているものもあります。従って明確には結論は出ていませんが、夫婦関係・親子関係に関する債権を保護するという法律の趣旨からみて、慰藉料についても非免責債権として取り扱われる可能性もあるものと思われます。

 執筆日20050602