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弁護士報酬Q&A

質問1
 着手金とか成功報酬とかいう言葉を聞いたことがあります。弁護士の報酬にはどういう種類があるのでしょうか?また、一般に言う手数料とはちがうのですか?
回答1

 弁護士がお客様からいただく報酬には、法律相談料、書面による鑑定料、着手金、成功報酬金、手数料、顧問料及び日当があります。それぞれ、当事務所の報酬基準では、以下のように定義されております。手数料というのは、一般には事務処理の対価を総称して用いることもあるようですが、当事務所も含めて、多くの法律事務所では、以下にご説明するように、弁護士の報酬の性格を区分けするひとつのカテゴリーとして用いています。また、他の事務所の例では、当事務所でいう成功報酬金を単に報酬金と呼んでいるところもありますが、当事務所では、弁護士報酬の一区分であることをわかりやすくするため、成功報酬(金)という言葉を使っています。

(1) 法律相談料
 当事務所内において行う法律相談(口頭による鑑定、電話による相談を含む。)に対する対価です。
(2) 書面による鑑定料
 お客様の依頼を受けた事項に関して書面による法律上の判断又は意見の表明を行うことに対する対価です。弁護士による鑑定書面は、特に法律意見書とかリーガルオピニオンなどとも呼ばれているようです。
(3) 着手金
 お客様のご依頼の事件または事務が、例えば、民事の訴訟事件、示談交渉、契約締結交渉、刑事弁護事件などのように、事件または法律事務の結果に成功、不成功が生じるものについて、当事務所の弁護士がお客様の依頼を受任した際にいただく業務対価です。着手金は、事件または事務処理の結果の成功、不成功にかかわらず、お返ししませんが、当事務所では、お客様の費用倒れをできるだけ回避するために、受任時において、お手持ちの資料等に基づき、事件の見通し(成功見込)についての判断をできるだけ開示した上で、着手金と成功報酬金の振り分けをお客様との合意により決めさせていただいております。
(4) 成功報酬金
 事件または法律事務について、成功の結果が得られたとき、得られた結果に対して、着手金とは別にお支払いいただくものです。成功とは、例えば、勝訴判決や裁判上の和解などにより、お客様の法律的な主張の全部または一部が公に認められた場合や、示談交渉を受任した場合に示談が成立した場合などを言います。お客様の事件の結果が判明した時点で、成功の程度に応じた金額の報酬が発生することになりますので、全く成功の結果が得られなかった場合には発生しません。当事務所では、事件の見通し等に応じて、着手金と成功報酬の振り分けによりお客様の費用倒れをできるだけ防止しようと考えております。
(5) 手数料
 内容証明の送付や遺言書の作成、相続放棄等の手続き、支払督促申立、供託事務など、原則として一回程度の手続又は委任事務処理で終了する事件等についての委任事務処理の対価です。当事務所では、通常考え得る諸手続について、手数料一覧を作成しております。
(6) 顧問料
 契約によって定める内容の法律事務を、継続的に行うことの対価です。
(7) 日 当
 当事務所の弁護士が、委任事務処理のために事務所所在地を離れ、移動によってその事件等のために拘束される場合(委任事務処理自体による拘束を除く。)の対価です。
質問2
 着手金と成功報酬金についてもう少し詳しく知りたいと思います。
質問2-1
 着手金、成功報酬金という考え方は、どういう依頼をした場合に適用されますか?
回答2-1
 依頼の内容が、弁護士の動いた結果により成功・不成功の区別を生じる場合に、成功不成功にかかわらず、依頼を受けた時点でいただくのが着手金、一部または全部の成功の結果が出たときに、成功の程度に応じていただくのが成功報酬金です。つまり、着手金・成功報酬金という考え方は、ご依頼の事件が弁護士の業務活動により成功・不成功の場合がある時に適用される報酬の考え方と言うことになります。成功・不成功の最もわかりやすい例としては、裁判の勝ち負けですね。もっとも、お客様が弁護士に依頼される事件の多くは、態様は様々でしょうが、何らかの形でお客様の権利や義務あるいは法律的な立場などが第三者との間で争われていたり、侵害されている場合でしょうから、このような不安定な状態を法律的に解決する業務はそのほとんどが何らかの形で成功・不成功の結果を伴うものと考えられます。
質問2-2
  成功・不成功はどのように判断するのですか。
回答2-2
 民事裁判の訴訟代理を受任した場合で事件が判決で決着した場合のように、勝ち負けがはっきりしていればわかりやすいのでしょうが、お客様が弁護士に依頼する事件の多くは、なんらかの形で成功・不成功の結果を伴いますので、一概にひとつの言葉で言い表すことは残念ながらできません。社会におこる紛争は様々であり、解決の方法もひとつではありません。事件の具体的な内容によっては、報酬基準のとおりに割り切れない場合もあるかもしれません。そのような場合にも、できる限りお客様の費用対効果ということを第一に、報酬基準を基本に臨機応変に対応させていただければと当事務所は考えております。
質問2-3
 着手金・成功報酬金はどのように算定されますか。
回答2-3
 原則的な考え方としては、着手金は、受任する事件の対象の「経済的利益」の額を、成功報酬金は委任事務処理により「確保できた経済的利益」の額を基準として算定します。すなわち、多くの場合、それぞれの経済的利益に一定の料率を乗じて着手金・報酬が算定されることになります。料率については報酬基準の別表1の類型毎に規定されています。しかし、事件の性質によっては、「経済的利益」の額を基準にすると不都合を生じる場合があります。例えば、不動産の明け渡し事件で常に対象の不動産価格を基準にしてしまうと非常に高額な報酬になってしまいます。そこで、当事務所の報酬基準では、事件の性質に応じて一部に定額制の着手金・成功報酬を採用しております。
質問2-4
 「経済的利益」の金額はどのように算出するのですか。
回答2-4  報酬基準において着手金及び成功報酬金を「経済的利益」の金額に料率を乗じて算出する場合の事件類型ごとに、着手、成功報酬それぞれについての「経済的利益の金額」の算定方法も定められています。具体的には、報酬基準の別表1をご覧下さい。具体例を挙げるなら、貸したお金の返済を求める場合や請負代金などの売掛金の支払を求める裁判では、着手金算定時の「経済的利益」の額は、相手方に請求する金額が経済的利益となり、成功報酬算定時の「経済的利益」の額は、事件処理の結果、和解交渉、調停、訴訟が終了し、相手方から実際に支払われた場合は、その支払金額が、実際の支払に至っていないが裁判で勝訴したり、裁判上の和解または調停などで相手方の支払義務が公に認められ、「債務名義」が成立した場合には、当該債務名義の金額がそれぞれ「経済的利益」の額になります。
 以上が基本的な考え方ですが、ここで、ひとつ難しい問題があります。例えば事故の示談交渉で、弁護士を立てる前に、ご自身で相手と交渉している場合を想定してください。ここで、あなたは100万円の賠償金を希望しているが、相手が30万円なら払うと言っている時はどうでしょう。
 やはり、あなたが100万円の支払を求めて裁判を起こす場合の経済的利益は100万円であり、相手が払うと言っている30万円を控除することは多くの場合なされません。また、裁判の結果、50万円の勝訴判決を得た場合の確保できた経済的利益はやはり(30万円を控除した20万円でなく)50万円となります。何故こうした考えになるかと申しますと、弁護士の入らない交渉で相手が口頭で述べていることには基本的に拘束力がありませんし、裁判になれば多くの場合相手にも弁護士がつくでしょう。これまでの交渉も撤回され、相手方の態度も硬化するかもしれません。裁判となればゼロからのスタートと考えざるを得ないのです。
 ですから、常に、費用対効果ということを考えながら事を進める必要があるわけです。そこで、重要なのが「事件に対する見立て」であることは言うまでもありません。相手に資力もあり、相手の出してきた金額が法律上請求しうる金額(つまり、勝てる金額)とあまりにも隔たりがあると考えられるなら裁判の方向になるでしょうし、反対の場合なら、示談交渉を優先に進めることになりましょう。
 相手方に既に弁護士がついており、金額のオファーが弁護士を通じてなされているような場合であれば、こちらに弁護士ついたとたんに相手がオファーを撤回することはまずありませんので、そうした場合には、こちらの希望金額と相手のオファー金額との差額を経済的利益として着手金や報酬を決めて、示談交渉に着手するということも十分に考えられることでしょう。
 いろいろ、考える要素があって難しいとは思いますが、ケースバイケースで、弁護士とよく話し合って、納得の出来る報酬の決め方をしていただければと思います。
質問3
 弁護士事務所の「報酬基準」はどの事務所でも同じですか?
回答3
 建前上は、報酬基準はそれぞれの事務所が自由に策定し運用いたします。しかし、ほとんどの事務所では、旧来の各弁護士会の報酬基準をベースに報酬基準を作成しているので、報酬基準自体は大同小異です。弁護士報酬基準はあくまでも基準であり、物の売買における「定価」というのとは異なります。つまり、報酬の額は、最終的には依頼者と弁護士の話し合いに基づく「合意」で定めるものであり、その際の目安(最高金額あるいは最低金額や報酬決定の考え方)を示したものにすぎません。
 したがって、基準は同じでも運用で大きくかわると思われます。例えば、報酬基準に着手金の最低が10万円とある場合、10万円を支払ったら費用倒れになる可能性が大きいとして、勝訴の可能性が高くても、受任をお断りすることもありますし、逆に、最低基準を無視して、着手金をゼロにして、実際に判決などで取れた金額をベースに成功報酬のみを頂くという合意で受任することもあり得ます。
質問4
 「判決をとってもただの紙切れになる場合がある」と聞きますが。「債務名義」「判決」の意義について、もう少し詳しく教えて下さい。
回答4
 裁判で勝訴したり、裁判所での和解であなたの権利が公に認めたとしても、それでただちに実際にお金の支払や物の引き渡しを受けられるわけではありません。裁判で負けても、相手が債務の弁済に応じない場合には、別途強制執行という手続きをとる必要があります。債務名義とは、「強制執行」をするために必要な文書のことで、判決書や裁判所での和解調書、調停調書などが債務名義になり得る文書です。弁護士報酬との関係では、回答2-4で述べたように、「債務名義」が成立した時点で、成功報酬金が発生する場合があるわけですが、注意すべきは、この時点では、実際の支払がなされるかどうかはまだわからないということです。裁判上の和解が債務名義になる場合で特に、相手方にも弁護士が入っている場合などは、相手方は和解内容を守り、約束どおりに支払われたり、物が引き渡されたりするのがほとんどですが、判決の場合は、当事者納得の上で解決したわけではないですから、強制執行をしてはじめて実際にお金や物を手にすることができるという場合も多いと思われます。そして、強制執行の手続きを弁護士に依頼する場合、別途、着手金・成功報酬金がかかりますので、その点も含めて予算を立て、費用対効果を考えながら、弁護士に依頼していくことが大切です。特に、相手の資力が乏しいと予想される場合には、せっかく多額の債務名義を取得しても強制執行すべき財産がない場合があり得ます。当事務所では、強制執行まで含む全体の見通しのなかで、お客様の納得した形で、請求時・強制執行時それぞれの着手金・成功報酬算定の料率を報酬基準の範囲内で重み付していくこと(例えば、相手方の資力が乏しい場合に、(強制執行手続きまでご依頼いただくことを条件に)債務名義をとるところまでの着手金・成功報酬金の算定料率を低くし、強制執行手続の着手金・成功報酬金の料率を基準の範囲内で高く設定するなど)で、費用倒れをできるだけ回避できるようにしたいと考えております。